日本の流通の歴史(中世から現代まで)

食品・医薬品・日用雑貨は、誰がつくり、誰が卸し、誰が売り、注文はどうやって伝わってきたのか。年表と、公的統計の数字で見ます。

本ページの基準:Web上で公開されている情報から書きました。年表の各項目には、確認の程度(◎〇)を付けています。詳しくは末尾の「利用条件・免責事項」をご覧ください。

このページの読み方
・「サプライチェーン」は新しい言葉で、昔の資料には出てきません。ここでは「つくる(製造)」「売る(流通・販売)」「つなぐ(情報・物流)」の3つの面から見ています。
・範囲は、食品・医薬品・日用雑貨に関わるものに絞りました。製造の面は、医薬品(道修町)以外はまだ調べておらず、薄くなっています。
・確認の程度: ◎=官公庁・公的機関の公式資料で確認 / 〇=企業の公式サイト、業界団体、事典、論文、業界紙などによる記述(原典との照合はしていない)。

6つの時代

つくる・売る・つなぐの流れ
時代つくる売るつなぐ
中世座・問丸が荷の保管・輸送・取引を担う。市で売る座が独占的な売買権を持つ。戦国期に楽市で崩れていく(本ページでは製造は未調査)
江戸薬は、輸入薬種を道修町で選別して卸す流れと、富山の配置売薬が並ぶ問屋・株仲間が全国市場をつくる。越後屋の店頭売り。配置薬の行商菱垣廻船。懸場帳(顧客ごとの記録)
明治〜戦前道修町の問屋が洋薬輸入から製薬へ百貨店(三越1904年)戦時は切符制・配給(1940〜)
戦後〜高度成長スーパーが薬品・日用品・食品を大量に安く売る紀ノ国屋(1953)、ダイエー(1957)。1972年にダイエーが三越を抜くJANコード(1978)、POS実験(1979〜81)
1970〜90年代業界ごとにVANができる(日用品1985、医薬品1987)コンビニの全国展開(1974〜)EOS、電話・FAX、VAN。中小企業VAN(1982)、電気通信事業法(1985)
平成〜令和一般用医薬品の販売制度の改正(2009)ドラッグストアが10兆円規模に。ECが物販の約1割Web-EDI(2001)、流通BMS(2007)、INSネット終了、2024年問題

年表

年できごと確認
平安末〜鎌倉港津で年貢米などの保管・輸送・中継取引を担う問丸が現れる。中世後期に営業の独占権を持つようになり、問屋と呼ばれるようになった〇
中世市には販売の座席(市座)があり、市座役を納めた者だけが営業できた。奈良南市には塩座・米座など30余りの座があった。座の商人は本所(領主)に座役を納め、かわりに独占的な売買権を得た〇
1549近江の六角義賢が石寺新市を楽市にした。文献上の「楽市」の初見。のち今川義元・織田信長も同様の措置を取り、16世紀後半に市座は次第に消えた〇
1673三井高利が江戸で呉服店「越後屋」を始める(のちの三越の起源)。店頭での現金売り・定価販売で知られる。表現は資料により差がある〇
1690富山藩主・前田正甫が江戸城内で反魂丹を飲ませ、諸国への行商が始まったとする逸話(元禄3年)。史料の裏づけがないとの指摘がある〇
1694大坂で二十四組問屋が結成される(江戸の十組問屋とほぼ同時期。当初10組、享保年間に24組)。菱垣廻船で江戸へ荷を送り、独占的に扱った。天保の改革で解散〇
1722薬種中買仲間の株124株が公許される(享保7年)。長崎で落札された輸入薬種を、大坂道修町の仲間が入札で買い、各地の薬種商へ卸した〇
江戸期配置売薬の行商人は懸場帳を携え、顧客ごとに使った薬・回収した薬・支払い、家族構成や健康状態まで記録した〇
1871武田長兵衛(道修町)が洋薬の輸入買付を始める(明治4年)。和漢薬の仲買から、洋薬の輸入、のち製薬へ。道修町の薬種問屋が近代の製薬会社の母体になった〇
1876配置売薬の薬売りが共同出資し、廣貫堂を設立(明治9年)〇
1895〜1904三越が呉服の陳列販売を導入(1895年)、全階を陳列場にして座売りを全廃(1903年)、「デパートメントストア宣言」(1904年)。食料品売場は1914年の新館から〇
1940日用必需品10品目(米・味噌・醤油・塩・マッチ・砂糖など)に切符制が導入される(4月)◎
1941生活必需物資統制令が公布される(4月1日)。すでに行われていた砂糖・マッチなどの切符制に法的根拠を与えた◎
1942食糧管理法が公布される(2月)。米穀の配給のため、各世帯に米穀通帳が配られた。衣料切符も導入された◎
1953東京・青山の紀ノ国屋が、キャッシュレジスターとセルフサービスを組み合わせた食料品店として開業。日本のスーパーマーケット第1号とされる。当初の客は高所得の外国人が中心で、価格は安くなかった〇
1957大栄薬品工業(神戸)が設立され(4月)、9月に大阪・千林商店街に「主婦の店ダイエー薬局」を開く。薬品・化粧品・日用品を大量に仕入れて安く売った〇
1972ダイエーが売上高で三越を抜き、小売業の首位になる。同年4月、流通システム開発センター(現GS1 Japan)が設立される〇
1974セブン‐イレブンの第1号店が東京・豊洲に開店(5月)。1975年に24時間営業を開始〇
1977〜78流通コードセンターが開設される(1977年)。1978年に国際EAN協会に加盟(国コード49)、JANシンボルがJIS化される。加盟年は資料により1977年・1978年・1987年と食い違う〇
1979〜81第1次〜第3次のPOSシステム店頭実験〇
1982公衆電気通信法が改正され、VANの自由化と中小企業VAN制度の創設が行われる(10月施行)◎
1982セブン‐イレブンがPOSシステムを開始し、電子発注台帳(EOB)による発注を始める(10月)。ただし他の資料に1987年とする記述もある〇
1985電気通信事業法が施行され(4月)、通信の独占が終わる。民間のVAN事業者が一気に増えた◎
1985〜86日用雑貨・化粧品業界のVAN運営会社、プラネットが設立される(1985年8月。ライオン・ユニ・チャームが端末の共同利用を発表したのは前年12月)。1986年2月にメーカーと卸のデータ交換が本格稼働〇
1987医薬品メーカーと卸約250社が集まり、業界共通のEDI「JD-NET」を構築する。サービス開始は昭和62年とも63年とも書かれ、資料により食い違う〇
1996加入電話の契約数がピーク(1996年度に6,153万件)。以後は減少◎
2001プラネットがWeb受発注サービスを開始(1月)〇
2007流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)ver1.0が公開される(4月1日)。データ項目はXML、通信回線はインターネットが前提。2005年に日本チェーンストア協会・日本スーパーマーケット協会がEDI標準の策定を始めたのが前段〇
2009改正薬事法が全面施行される(6月)。一般用医薬品が第1〜3類に分けられ、登録販売者を置けば、薬剤師のいない店でも第1類以外を売れるようになった◎
2016INSネットの提供終了を受け、業界団体が流通BMSを標準EDIとして推奨する方針を示す(11月)〇
2018「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」が出される(1月23日)。2021年11月と2024年3月に改訂◎
2024トラックドライバーの時間外労働に年960時間の上限が適用される(4月)。国土交通省の検討会は、対策を取らなければ2024年度に輸送能力が約14%不足すると試算していた(いわゆる「2024年問題」)◎
2024JD-NETが第8次システムの運用を開始(11月)。従来の統一商品コードからJANコードへ移行。旧形式との並行運用は2027年11月ごろまで〇

注文の伝え方の移り変わり

メーカー・卸・小売のあいだの受発注
しくみおおよその時期特徴
対面・帳面江戸〜行商や問屋が顧客を回り、帳面(懸場帳など)で記録する
電話・FAX電話は昭和、FAXは1972年以降に急速に普及公衆電話網を使うファクシミリが、官公庁・大企業から中小企業、商店へ広がった(昭和57年版通信白書)。1990年代の世帯・事業所の普及率は未確認
EOS(オンライン受発注)1970年代〜主に小売業と卸売業のあいだで導入。データ形式・コード・手順が統一されておらず、受注側が取引先ごとに別々のシステムに対応する必要があった。導入できたのは量販店や大手チェーンが中心
業界VAN1982年〜(制度)、1985年〜(自由化)業界ごとに運営会社ができ、メーカーと卸のあいだでデータを交換。日用品1985年(プラネット)、医薬品1987年(JD-NET)
Web-EDI2000年代〜インターネットを使う受発注(プラネットのWeb受発注は2001年)
流通BMS2007年〜XML・インターネットを前提にした標準。INSネットの提供終了を受け、標準EDIとして推奨(2016年)。導入は納品方法・物流業務の変更を伴うため、伸びは緩やかだったという事例の報告もある

1990年代以降は、EDIがEOSに取って代わるように広がった、と整理されています。

数字で見る流通

1. 固定電話の契約数

加入電話の契約数(総務省 情報通信白書)
年度契約数(万件)
19732,417
19814,000超
19966,153(ピーク)
20084,137

受発注が電話・FAXで行われた時代の土台です。ピーク後は減り続け、2008年度末にはピークの約3分の2になりました。

2. 卸売と小売の販売額(平成19年)

商業統計 平成19年調査(経済産業省)
区分年間商品販売額
卸売業413兆5,317億円
小売業134兆7,054億円
卸売÷小売約3.07倍(計算値)

日本の卸小売比率は3〜4倍の範囲とされます。卸売の販売額には、卸から卸への取引も含まれます。1960年代など長期の推移は、今回確認できませんでした。

3. 宅配便

宅配便の取扱個数(国土交通省)
年度取扱個数
令和450億588万個(前年度比+1.1%)

「宅急便」「飛脚宅配便」「ゆうパック」の3つで約95%を占めます。「ゆうパケット」は平成28年9月まではメール便として集計され、29年度以降は宅配便に含まれるため、年度をまたぐ単純比較はできません。

4. コンビニエンスストア

店舗数と売上高(経済産業省の統計表を転載したサイトによる)
暦年店舗数売上高(億円)
2021約56,352117,601
2022約56,232121,996
2023約56,112127,321

店舗数は3年連続で緩やかに減り、売上高は増えています。一次資料(経済産業省・日本フランチャイズチェーン協会)は確認できていません。〇の扱いです。

5. ドラッグストア

ドラッグストア業態の市場規模(業界団体の推計)
年度売上(兆円)備考
20208.04
202410.03前年度比+9.0%。初めて10兆円を超えた。調剤・ヘルスケアが3兆3,318億円(33.2%)

店舗数は、2023年度が23,041店、2024年度は別の集計で23,723店です。調査対象や集計方法が違うため、単純には比べられません。経済産業省の商業動態統計では、集計範囲が異なり、2025年度で約9.5兆円とされています。ドラッグストアは、ダイエーが薬局として始まったように、薬品・化粧品・日用品・食品を同じ店で売る業態です。

6. 電子商取引(EC)

BtoCのEC市場、物販系分野(経済産業省)
年市場規模EC化率
202314兆6,760億円9.38%
202415兆2,194億円(前年比+3.70%)9.78%

物販の約9割は、いまも店舗での販売です。品目別では、食品・飲料・酒類が3兆1,163億円(EC化率4.52%)とされています(二次資料による数字で、原本での確認が必要です)。

医薬品の流れ

草の根VANとのつながり

置き薬の歴史は 富山売薬三百年の歴史 もご覧ください。

確認できていないこと

食べものや生活の歴史は、日本人の食生活の歴史、日本のお茶の歴史、日本のはちみつの歴史、貨幣価値換算表もご覧ください。

出典

注意(確認の程度)

利用条件・免責事項

  1. 情報の基準:本ページは、Web上で公開されている情報を基準に書いています。各項目の根拠は「出典」の欄に記載しています。
  2. 参考情報:本ページは歴史・統計の参考情報であり、学術的な正確さを保証するものではありません。医薬品の効能や使い方、取引や投資に関する助言ではありません。
  3. 数字の読み取り:統計の数字は、定義(暦年か年度か、事業所単位か企業単位か)によって意味が変わります。表の注記を併せてお読みください。
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