蜂蜜は、いつ、どのミツバチから、どう採られ、誰のものだったのか。年表と、農林水産省の統計の数字で見ます。
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| 時代 | ミツバチと養蜂 | 蜂蜜の位置づけ |
|---|---|---|
| 飛鳥〜平安 | 643年に百済の太子が養蜂を試みたが、定着しなかった(通説では日本の養蜂の始まり) | 外国からの贈り物、朝廷への献上品、薬、香の材料 |
| 江戸 | ニホンミツバチの旧式養蜂が確立した。紀州の熊野が最大のブランド産地 | 各地の産物(伊勢、熊野、尾張、土佐など)。販売時は「熊野蜜」 |
| 明治〜戦前 | 1877年にセイヨウミツバチが導入された。専業化・転地養蜂が進んだ | 国産の甘味。第一次大戦期に価格が高騰。戦時中は甘味・栄養源・医薬品 |
| 戦後 | 1955年に養ほう振興法。1963年に輸入自由化。イチゴなどの受粉用の蜜蜂が増えた | 輸入が大半を占める。国産は約6% |
| 年 | できごと | 確認 |
|---|---|---|
| 643年 (皇極2) | 『日本書紀』に「蜜蜂」の語が初めて見える。百済の太子余豊が、蜜蜂の巣4枚を三輪山に放して飼おうとしたが、増えなかった。これが日本の養蜂の始まりとする説が通説。 | 〇 |
| 739年 (天平11) | 渤海国から聖武天皇へ、蜜3斤が毛皮や人参とともに献上された。外国からの貴重な贈り物だった。 | 〇 |
| 760年 (天平宝字4) | 5大寺に、雑薬2櫃と蜜缶1口が施された。蜜は貴重な薬として使われた。 | 〇 |
| 905〜927年 (延喜式) | 『延喜式』に、甲斐・相模・信濃・能登・越後・備中・備後などから蜜を献上する定めがある。国内でも蜜の献上が見られるようになった。 | 〇 |
| 平安時代 | 『源氏物語』「鈴虫」の巻に、蜜で香を練る描写がある。平安末期の『今鏡』『今昔物語』には、貴族や庶民の間でミツバチが飼われていた様子が描かれている。鎌倉〜中世は、養蜂の記載が文献に見られない。 | 〇 |
| 1708年 (宝永5) | 貝原益軒『大和本草』が、蜂蜜の産地として伊勢、紀伊の熊野、尾張、土佐などを挙げ、土佐産を良品とした。 | 〇 |
| 1791年 (寛政3) | 久世敦行『家畜畜養記』。ニホンミツバチの生態と飼養技術を述べた最初の本とされる。 | 〇 |
| 1799年 (寛政11) | 木村孔恭『日本山海名産図会』が、内勤蜂と外勤蜂の区別や分蜂を、挿絵入りで記述した。 | 〇 |
| 1805年 (文化2) | 小野蘭山『本草綱目啓蒙』が、各地の産地を挙げ、販売時はすべて「熊野蜜」として売られていたと記した。熊野が最大のブランド産地だった。 | 〇 |
| 江戸後期 | 和歌山の貞市右衛門(通称「蜜市」)が、ニホンミツバチで数百群を飼い、多量の採蜜に成功した。当時の最高技術でも、採蜜量は現在の1〜2割程度だった。 | 〇 |
| 1877年 (明治10) | 12月28日、勧農局がアメリカからイタリア種のセイヨウミツバチを購入し、内藤新宿の試験場で飼い始めた。国内にセイヨウミツバチを導入した最初の例と考えられている。導入年を明治8年とする説もある。 | 〇 |
| 1878〜80年 (明治11〜13) | 武田昌次が小笠原島でセイヨウミツバチの養蜂を始め、数百群まで増やした。小笠原は、初期の種蜂の供給地として重要だった。起源の資料には食い違いがある。 | 〇 |
| 1903〜07年 (明治36〜40) | 山梨の青柳浩次郎がアメリカから輸入した蜂の増殖に成功し(1903)、箱根を拠点に種蜂の改良と頒布を始めた(1905)。渡辺寛が渡辺養蜂場を創設し、養蜂の専業化を図った(1907)。日露戦後は、蜂蜜より蜂そのものが投機の対象になり、種蜂事業が過熱した。 | 〇 |
| 1913年 (大正2) | 九州で、兵頭文平が宮崎から70群を山川港へ移動させた。採蜜を目的にした大規模な転飼の最初とされる。 | 〇 |
| 1918年 (大正7) | 第一次世界大戦で欧州の糖分が不足し、蜜の価格が高騰した。蜂蜜の輸出の噂が立ったが、国内の生産量は少なく、集荷に苦労した。 | 〇 |
| 昭和前期 (戦時中) | 蜂蜜は、甘味・栄養源・医薬品として扱われた。蜜蝋は砲弾、魚雷、光学兵器などの軍需用途が広かった。戦況の悪化で、容器・養蜂器具・給餌用の砂糖が手に入りにくくなり、養蜂家の招集や徴用も起きた。 | 〇 |
| 1945年 (昭和20) | 食糧難で甘味が不足し、蜂蜜が甘味の代用として注目された。統制価格は守られず、価格は上がり続けた。 | 〇 |
| 1955年 (昭和30) | 8月27日に「養ほう振興法」(昭和30年法律第180号)が公布された。それまでは各県が条例で転飼を個別に規制していたため、届出や転飼などの全国共通の最低限のルールを定めた。 | ◎ |
| 1963年 (昭和38) | 蜂蜜の輸入が自由化され、国内の養蜂業は大打撃を受けた。 | 〇 |
| 1968年ごろ | イチゴ栽培で、花粉交配用の蜜蜂の導入が始まった。ハウス栽培では野生の昆虫による受粉が期待できないため。昭和40年代にハウス栽培が盛んになり、需要が急増した。 | ◎ |
| 1985年 (昭和60) | 国際養蜂会議が名古屋で開かれ、53カ国から2,000名を超える関係者が集まった。この年の蜜蜂の飼育戸数は9,499戸。 | 〇 |
| 2012〜13年 (平成24〜25) | 養蜂振興法が改正され、2013年1月1日に施行された。蜂群の適正な管理と配置、届出義務の対象の拡大、蜜源植物の確保が主な内容。届出義務が、業として飼う人以外にも広がったため、届出の戸数が増えた。 | ◎ |
| 令和5〜7年 (2023〜25) | 国産蜂蜜の自給率は約6%。蜜蜂の飼育戸数は、令和7年に12,150戸、蜂群数は24万2千群になった(1月1日時点)。 | ◎ |
| 年 | 国内生産量 | 輸入量 | 消費量 | 自給率 |
|---|---|---|---|---|
| 平成28 | 2,754 | 48,445 | 51,166 | 5.4 |
| 29 | 2,827 | 42,821 | 45,627 | 6.2 |
| 30 | 2,826 | 44,521 | 47,329 | 6.0 |
| 令和元 | 2,911 | 44,788 | 47,689 | 6.1 |
| 2 | 2,929 | 49,348 | 52,259 | 5.6 |
| 3 | 2,779 | 47,132 | 49,844 | 5.5 |
| 4 | 2,549 | 47,276 | 49,805 | 5.1 |
| 5 | 2,636 | 41,924 | 44,539 | 5.9 |
| 6 | 2,618 | 45,416 | 48,012 | 5.5 |
国内の消費量は約4万5千〜5万トンで、自給率は5〜6%台で推移しています。令和6年の輸入量45,416トンのうち、中国が32,371トン(約71%)で、アルゼンチン3,120トン、カナダ2,918トンが続きます。消費量は、生産量と輸入量から輸出量(令和6年は22トン)を引いて算出された数字です。
国産蜂蜜は、ほぼ全てが家庭用です。輸入蜂蜜は、約60%が家庭用、約40%が製菓・製パン、化粧品などの業務・加工用です。
| 区分 | 価格 | 備考 |
|---|---|---|
| 国産蜂蜜(卸売) | 平均1,900 | 1,200〜2,500円(日本養蜂協会の聞き取り) |
| 輸入蜂蜜(CIF価格) | 456 | 全輸入国の平均。関税などを含まない |
| 中国産(CIF価格) | 282 | 関税などを含めると353円(課税後) |
CIF価格は、輸入時の運賃・保険料を含む価格です。卸売価格との直接の比較はできないため、おおまかな目安として見てください。国産の蜂蜜は、生産コストの違いもあり、中国産の数倍の価格です。
| 年 | 飼育戸数 | 蜂群数(千群) |
|---|---|---|
| 平成24 | 5,934 | 184 |
| 25 | 8,312 | 204 |
| 27 | 9,567 | 213 |
| 30 | 9,578 | 213 |
| 令和2 | 10,021 | 213 |
| 4 | 11,276 | 242 |
| 6 | 12,061 | 236 |
| 7 | 12,150 | 242 |
飼育戸数は、昭和60年の9,499戸から、平成17年の4,790戸まで減りました(日本養蜂協会)。その後、令和7年は12,150戸まで増えています。注意:平成25年の増加は、平成24年の法改正で、届出義務が趣味などで飼う人にも広がったためで、実際の増加を表すものではありません。蜂群数は近年ほぼ横ばいで、1戸あたりの蜂群数は平成24年の31.1群から、令和7年の19.9群に減りました。令和7年の戸数のうち、10群未満の飼育者が8,662戸です。
令和7年の調査では、日本蜜蜂(ニホンミツバチ)の飼育戸数が6,085戸、蜂群数が約2万5千群と示されました(それ以前の年は内訳の数字がありません)。
| 道県 | 生産量 | 全国に占める割合(%) |
|---|---|---|
| 北海道 | 356.4 | 13.6 |
| 熊本 | 244.2 | 9.3 |
| 秋田 | 229.1 | 8.8 |
| 長野 | 218.8 | 8.4 |
| 青森 | 134.3 | 5.1 |
| 和歌山 | 115.9 | 4.4 |
上位5道県で、国内の生産量の約45%を占めます(農林水産省の資料は「約4割」と表記)。
蜂蜜と同じく、食べものや飲みものの歴史は、日本人の食生活の歴史、日本のお茶の歴史、貨幣価値換算表もご覧ください。