日本のはちみつの歴史(古代から現代まで)

蜂蜜は、いつ、どのミツバチから、どう採られ、誰のものだったのか。年表と、農林水産省の統計の数字で見ます。

本ページの基準:Web上で公開されている情報から書きました。年表の各項目には、確認の程度(◎〇)を付けています。詳しくは末尾の「利用条件・免責事項」をご覧ください。

このページの読み方
・古代から明治までの年表は、主に一般社団法人日本養蜂協会の「養蜂の歴史」ページの記述(参考文献は渡辺寛・渡辺孝『近代養蜂』、佐々木正己『ニホンミツバチ』、農林省畜産局『畜産発達史』)に基づきます。原典の古文書や書籍との照合はしていません。
・戦後の数字は、農林水産省「養蜂をめぐる情勢」(令和7年11月)に基づきます。
・確認の程度: ◎=官公庁・公的機関の公式資料で確認 / 〇=業界団体や論文などの資料による記述(原典との照合はしていない)。

3つの時代

日本の蜂蜜と養蜂の流れ
時代ミツバチと養蜂蜂蜜の位置づけ
飛鳥〜平安643年に百済の太子が養蜂を試みたが、定着しなかった(通説では日本の養蜂の始まり)外国からの贈り物、朝廷への献上品、薬、香の材料
江戸ニホンミツバチの旧式養蜂が確立した。紀州の熊野が最大のブランド産地各地の産物(伊勢、熊野、尾張、土佐など)。販売時は「熊野蜜」
明治〜戦前1877年にセイヨウミツバチが導入された。専業化・転地養蜂が進んだ国産の甘味。第一次大戦期に価格が高騰。戦時中は甘味・栄養源・医薬品
戦後1955年に養ほう振興法。1963年に輸入自由化。イチゴなどの受粉用の蜜蜂が増えた輸入が大半を占める。国産は約6%

年表

年できごと確認
643年
(皇極2)
『日本書紀』に「蜜蜂」の語が初めて見える。百済の太子余豊が、蜜蜂の巣4枚を三輪山に放して飼おうとしたが、増えなかった。これが日本の養蜂の始まりとする説が通説。〇
739年
(天平11)
渤海国から聖武天皇へ、蜜3斤が毛皮や人参とともに献上された。外国からの貴重な贈り物だった。〇
760年
(天平宝字4)
5大寺に、雑薬2櫃と蜜缶1口が施された。蜜は貴重な薬として使われた。〇
905〜927年
(延喜式)
『延喜式』に、甲斐・相模・信濃・能登・越後・備中・備後などから蜜を献上する定めがある。国内でも蜜の献上が見られるようになった。〇
平安時代『源氏物語』「鈴虫」の巻に、蜜で香を練る描写がある。平安末期の『今鏡』『今昔物語』には、貴族や庶民の間でミツバチが飼われていた様子が描かれている。鎌倉〜中世は、養蜂の記載が文献に見られない。〇
1708年
(宝永5)
貝原益軒『大和本草』が、蜂蜜の産地として伊勢、紀伊の熊野、尾張、土佐などを挙げ、土佐産を良品とした。〇
1791年
(寛政3)
久世敦行『家畜畜養記』。ニホンミツバチの生態と飼養技術を述べた最初の本とされる。〇
1799年
(寛政11)
木村孔恭『日本山海名産図会』が、内勤蜂と外勤蜂の区別や分蜂を、挿絵入りで記述した。〇
1805年
(文化2)
小野蘭山『本草綱目啓蒙』が、各地の産地を挙げ、販売時はすべて「熊野蜜」として売られていたと記した。熊野が最大のブランド産地だった。〇
江戸後期和歌山の貞市右衛門(通称「蜜市」)が、ニホンミツバチで数百群を飼い、多量の採蜜に成功した。当時の最高技術でも、採蜜量は現在の1〜2割程度だった。〇
1877年
(明治10)
12月28日、勧農局がアメリカからイタリア種のセイヨウミツバチを購入し、内藤新宿の試験場で飼い始めた。国内にセイヨウミツバチを導入した最初の例と考えられている。導入年を明治8年とする説もある。〇
1878〜80年
(明治11〜13)
武田昌次が小笠原島でセイヨウミツバチの養蜂を始め、数百群まで増やした。小笠原は、初期の種蜂の供給地として重要だった。起源の資料には食い違いがある。〇
1903〜07年
(明治36〜40)
山梨の青柳浩次郎がアメリカから輸入した蜂の増殖に成功し(1903)、箱根を拠点に種蜂の改良と頒布を始めた(1905)。渡辺寛が渡辺養蜂場を創設し、養蜂の専業化を図った(1907)。日露戦後は、蜂蜜より蜂そのものが投機の対象になり、種蜂事業が過熱した。〇
1913年
(大正2)
九州で、兵頭文平が宮崎から70群を山川港へ移動させた。採蜜を目的にした大規模な転飼の最初とされる。〇
1918年
(大正7)
第一次世界大戦で欧州の糖分が不足し、蜜の価格が高騰した。蜂蜜の輸出の噂が立ったが、国内の生産量は少なく、集荷に苦労した。〇
昭和前期
(戦時中)
蜂蜜は、甘味・栄養源・医薬品として扱われた。蜜蝋は砲弾、魚雷、光学兵器などの軍需用途が広かった。戦況の悪化で、容器・養蜂器具・給餌用の砂糖が手に入りにくくなり、養蜂家の招集や徴用も起きた。〇
1945年
(昭和20)
食糧難で甘味が不足し、蜂蜜が甘味の代用として注目された。統制価格は守られず、価格は上がり続けた。〇
1955年
(昭和30)
8月27日に「養ほう振興法」(昭和30年法律第180号)が公布された。それまでは各県が条例で転飼を個別に規制していたため、届出や転飼などの全国共通の最低限のルールを定めた。◎
1963年
(昭和38)
蜂蜜の輸入が自由化され、国内の養蜂業は大打撃を受けた。〇
1968年ごろイチゴ栽培で、花粉交配用の蜜蜂の導入が始まった。ハウス栽培では野生の昆虫による受粉が期待できないため。昭和40年代にハウス栽培が盛んになり、需要が急増した。◎
1985年
(昭和60)
国際養蜂会議が名古屋で開かれ、53カ国から2,000名を超える関係者が集まった。この年の蜜蜂の飼育戸数は9,499戸。〇
2012〜13年
(平成24〜25)
養蜂振興法が改正され、2013年1月1日に施行された。蜂群の適正な管理と配置、届出義務の対象の拡大、蜜源植物の確保が主な内容。届出義務が、業として飼う人以外にも広がったため、届出の戸数が増えた。◎
令和5〜7年
(2023〜25)
国産蜂蜜の自給率は約6%。蜜蜂の飼育戸数は、令和7年に12,150戸、蜂群数は24万2千群になった(1月1日時点)。◎

数字で見るはちみつの今

1. 国産は約6%、輸入が大半

蜂蜜の生産量・輸入量・消費量(トン)と自給率(%)
年国内生産量輸入量消費量自給率
平成282,75448,44551,1665.4
292,82742,82145,6276.2
302,82644,52147,3296.0
令和元2,91144,78847,6896.1
22,92949,34852,2595.6
32,77947,13249,8445.5
42,54947,27649,8055.1
52,63641,92444,5395.9
62,61845,41648,0125.5

国内の消費量は約4万5千〜5万トンで、自給率は5〜6%台で推移しています。令和6年の輸入量45,416トンのうち、中国が32,371トン(約71%)で、アルゼンチン3,120トン、カナダ2,918トンが続きます。消費量は、生産量と輸入量から輸出量(令和6年は22トン)を引いて算出された数字です。
国産蜂蜜は、ほぼ全てが家庭用です。輸入蜂蜜は、約60%が家庭用、約40%が製菓・製パン、化粧品などの業務・加工用です。

2. 値段:国産は輸入の数倍

令和6年の価格(円/kg)
区分価格備考
国産蜂蜜(卸売)平均1,9001,200〜2,500円(日本養蜂協会の聞き取り)
輸入蜂蜜(CIF価格)456全輸入国の平均。関税などを含まない
中国産(CIF価格)282関税などを含めると353円(課税後)

CIF価格は、輸入時の運賃・保険料を含む価格です。卸売価格との直接の比較はできないため、おおまかな目安として見てください。国産の蜂蜜は、生産コストの違いもあり、中国産の数倍の価格です。

3. 蜜蜂を飼う人は増えた

蜜蜂の飼育戸数と蜂群数(各年1月1日)
年飼育戸数蜂群数(千群)
平成245,934184
258,312204
279,567213
309,578213
令和210,021213
411,276242
612,061236
712,150242

飼育戸数は、昭和60年の9,499戸から、平成17年の4,790戸まで減りました(日本養蜂協会)。その後、令和7年は12,150戸まで増えています。注意:平成25年の増加は、平成24年の法改正で、届出義務が趣味などで飼う人にも広がったためで、実際の増加を表すものではありません。蜂群数は近年ほぼ横ばいで、1戸あたりの蜂群数は平成24年の31.1群から、令和7年の19.9群に減りました。令和7年の戸数のうち、10群未満の飼育者が8,662戸です。
令和7年の調査では、日本蜜蜂(ニホンミツバチ)の飼育戸数が6,085戸、蜂群数が約2万5千群と示されました(それ以前の年は内訳の数字がありません)。

4. 蜂蜜の主な産地(令和6年)

蜂蜜の生産量の上位(トン)
道県生産量全国に占める割合(%)
北海道356.413.6
熊本244.29.3
秋田229.18.8
長野218.88.4
青森134.35.1
和歌山115.94.4

上位5道県で、国内の生産量の約45%を占めます(農林水産省の資料は「約4割」と表記)。

5. はちみつ以外の役割:受粉

蜂蜜と同じく、食べものや飲みものの歴史は、日本人の食生活の歴史、日本のお茶の歴史、貨幣価値換算表もご覧ください。

出典

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  3. 数字の読み取り:統計の数字は、定義(CIF価格か卸売価格か、1月1日時点か年間か)によって意味が変わります。表の注記を併せてお読みください。
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