いま世界で誰がネットを使い、誰が使えていないのか。12の地域に分けて見て、「辺鄙な場所ほどネットが重要」「便利な場所はもっと活用すべき」という見方が、資料から言えるのかを考えます。
本ページの基準:Web上で公開されている情報(2025〜2026年の公表分が中心)から書きました。各項目には、確認の程度(◎〇)を付けています。詳しくは末尾の「利用条件・免責事項」をご覧ください。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| インターネット利用者 | 約60億人(世界人口の約74%) |
| 利用していない人 | 22億人(うち96%が低・中所得国) |
| 2025年の増加 | 2億4,000万人超 |
| 高所得国 / 低所得国 | 94% / 23% |
| 後発開発途上国 / 内陸開発途上国 | 34% / 38% |
| 都市 / 農村 | 85% / 58%(比は1.5。4年前は1.6) |
| 男性 / 女性 | 77% / 71% |
| 15〜24歳 / それ以外 | 82% / 72% |
| 5Gの人口カバー率 | 世界55%。高所得国84%、低所得国4% |
| 利用者1人あたりのモバイルデータ量 | 高所得国は、低所得国の約8倍 |
| 料金 | 約60%の低・中所得国で、モバイルのデータ通信が手の届かない価格のまま |
ITUの2024年の値は、58億人(71%)に改定されています。他の推計とは数字が違います。DataReportal(2025年1月)は、利用者55.6億人(67.9%)、未利用26.3億人としています。調査の方法と時点が違うためで、どれが誤りということではありません。
| 地域 | 利用率 | 備考 |
|---|---|---|
| アフリカ | 36% | 都市と農村の比は2.6 |
| アラブ諸国 | 70% | |
| アジア太平洋 | 77% | |
| 米州 | 88〜93%の範囲に入る(米州・欧州・CISの3地域)。二次資料では、米州88%、欧州92%、CIS93% | |
欧州は、都市と農村の比が1.1です。高所得国の平均も1.1で、接続の差はほぼ解消しています。低所得国では、農村の利用者は14%(7人に1人)で、都市の3分の1強です。ITUの数字は、過去の版が新しい推計で改定されることがあります(2023年版ではアフリカ37%と公表されていました)。
| 地域 | 数字と特徴 | 確認 |
|---|---|---|
| 欧州 | ITUの欧州地域は約92%(二次資料。ITU本体は米州・欧州・CISを88〜93%の範囲で公表)。都市と農村の比は1.1で、接続の差はほぼない。EUの16〜74歳の毎日利用は85.9%(2023年)。一方、基本的なデジタル技能を持つ人は、都市62.6%、町・郊外53.3%、農村47.5%(2023年、Eurostatを引用した論文)。接続の差は小さいが、使いこなす力に差が残る | ◎〇 |
| ロシア | 世帯のインターネット接続は90.4%(2024年、Rosstat。HSEの分析)。タタールスタン共和国・ヤマロ・ネネツ自治管区は98%超。接続の質に「十分満足」と答えた世帯は、都市59%、農村39%。ITUではCIS(独立国家共同体)の括りで、約93%(二次資料) | 〇 |
| 北米 | ITUの米州は約88%(二次資料)。米国のPew調査(2025年)で、家庭のブロードバンド契約は郊外84%、都市75%、農村71%(二次資料による要約)。所得による差の方が大きく、年収10万ドル超の世帯は94%、3万ドル未満は54%。スマートフォンだけで使う人が成人の16%(2025年)。カナダは今回確認できず | 〇 |
| 南米 | ブラジル(2024年、CETIC.br): 個人の利用は都市で86%。世帯の接続は都市85%、農村74%。農村の利用者は携帯電話だけで使う人が45%(都市28%)。「意味のある接続」(速度・安定・費用を満たす)は人口の22%。ラテンアメリカ・カリブ全体では、固定回線の家庭接続が都市74.8%、農村35.8%(2022年、CEPAL。UNDPによる引用)。コロンビアの農村・散在地域は56.9%(2025年、前年比+15ポイント。都市部は78.8%) | 〇 |
| オセアニア | オーストラリア: 先住民の電子的包摂の指数の差は、大都市6.2ポイント、非常に遠隔の地域22.8ポイント(2025年。全国の平均差10.5)。遠隔の先住民コミュニティで、毎日使う人は44%(2022年)から62%(2024年)に増え、全く使わない人は20%から14%に減った。太平洋の島々は低い: パプアニューギニア11.2%(調査年は不明)、ソロモン諸島21%(古い資料で、利用者の98%が都市部)。仏領ポリネシアは88.5% | 〇 |
| 東南アジア | インドネシア(2025年、APJII): 普及率80.66%(約2億2,900万人)。地域別では、ジャワ84.69%、パプア69.26%。後進・国境・最外縁の地域(3T)は、全利用者の1.91%にとどまる。域内のデジタル経済の流通総額は2025年に3,000億ドル超の見込み(前年比+15%、10市場。Google・Temasek・Bain) | 〇 |
| 中国 | 網民(インターネット利用者)11.25億人、普及率80.1%(2025年12月、CNNIC第57次報告)。農村の網民は3.14億人(全体の27.9%)、農村の普及率は69.5%(報道)。利用者の99.6%がスマートフォンで使う。農村のネット通販の拠点「淘宝村」は、2020年に5,425村(AliResearch)、2022年に7,780村(研究発表の資料) | 〇 |
| 韓国 | インターネット利用率94.5%(2024年7月、3歳以上、科学技術情報通信部の調査)。2015年は85.1%。農村・都市別の数字は今回確認できず | 〇 |
| 日本 | 個人の利用率86.2%(2023年)、85.6%(2024年)。スマートフォン74.4%、パソコン46.8%(2024年)。都道府県別では、80%を超えるのが38都道府県(令和6年版情報通信白書) | ◎ |
| 北アフリカ・アラブ | ITUのアラブ諸国は70%(2025年)。GSMAの中東・北アフリカ(2025年)では、モバイルインターネットの利用者が3億800万人で、2030年に3億7,800万人(人口の52%)の見込み。高所得の湾岸諸国(GCC)は人口の71%、低・中所得の国は43%。圏内で使わない人が約3.4億人(報道による要約)。エジプト・イエメン・スーダンなどの国別の数字は確認できず | ◎〇 |
| 中南アフリカ | ITUのアフリカは36%(2025年)で、全地域で最も低い。都市と農村の比は2.6(欧州は1.1)。GSMAの2024年版では、サハラ以南で、通信圏内なのに使わない人が60%(約7.1億人)(世界は39%)。最貧困の20%の人が、最低価格のネット対応スマートフォンを買うと月収の87%。ナイジェリアでは、4G圏内なのに使ったことのない人が約60%、4G圏外が13%。一方、モバイルマネーの口座はサハラ以南で11億(2025年、GSMA) | ◎〇 |
国や調査によって、比べる単位(個人か世帯か、固定回線かモバイルか)が違います。「都市」と「農村」の定義も国ごとに違います。
| 内容 | 結果 | 確認 |
|---|---|---|
| 高速回線(海底ケーブル)の到着 | アフリカ12か国の3つのデータ(Hjort・Poulsen、AER 2019)で、雇用率が大きく上がった。8か国のデータで平均+3.1ポイント(+4.4%)。学歴の低い人にも効果があったが、全体では高技能の職の増加が中心。企業の参入・生産性・輸出も増えた。人の移動による「雇用の奪い合い」はほぼなかった | 〇 |
| モバイルマネー(M-PESA、ケニア) | Suri・Jack(Science 2016)の推計で、約19万4,000世帯(全世帯の2%)が貧困から抜け出した。女性が世帯主の世帯で効果が大きく、農業から事業へ移る女性が増えた | 〇 |
| 農村の電子商取引(中国の淘宝村) | 2020年に5,425村、農村で828万人の雇用(AliResearch)。2022年は7,780村、郡の経済成長への因果効果を調べた研究が進行(研究発表の資料) | 〇 |
| 遠隔医療 | 42件の研究のレビュー(2015〜2025年)で、安定したブロードバンドがあると、遠隔医療の利用と結果が良い傾向。通院の距離と費用が減るとする報告もある。ただし、証拠は高所得国に偏り、回線だけでは足りず、操作の技能・端末・支援が必要。因果を厳密に調べた研究は今回見つからなかった | 〇 |
| 地域の自前のネットワーク | インターネット・ソサエティは2025年に、87か国超で地域のネットワークづくりを支援。パプアニューギニアの村では、50世帯から約5,000人に広がった事例 | 〇 |
| オーストラリアの遠隔コミュニティ | 毎日使う人が2022年の44%から2024年の62%に増加(上の「オセアニア」参照) | 〇 |
「つながると効果が出る」ことを因果として示した研究は、アフリカの雇用(海底ケーブル)とケニアのモバイルマネーが中心です。遠隔地の健康・教育・買い物については、因果を示す研究を今回は確認できませんでした。
| 観点 | 内容 | 確認 |
|---|---|---|
| 接続の差は小さい | 高所得国の利用率は94%、都市と農村の比は1.1。日本の都道府県は38が80%超、韓国は94.5%。接続の段階は、ほぼ終わっている | ◎〇 |
| 使い方の差は残る | 高所得国の利用者は、低所得国の約8倍のモバイルデータ量を使う(ITU)。EUの基本的なデジタル技能は、都市62.6%、農村47.5% | ◎〇 |
| 都市の方が、ネット通販は多い | 欧州の人口密度の高い都市部では、国の平均より15〜20%高い(RegioPlan。業界の資料)。通販の主な担い手は、若く、都市に住み、購買力が平均以上の層 | 〇 |
| 「もっと活用すべき」の根拠 | 活用の程度が、都市の人の成果(収入、健康、満足度)にどれだけつながるかを調べた研究は、今回の調査では確認できなかった | — |
整理(資料からの推論です):遠隔地でネットが特に効くのは、通信が「長い移動」(通院、買い物、送金、出稼ぎ)の代わりになるからだと考えられます。移動が短くて済む都市では、代わりになる範囲が小さくなります。一方、都市でも、使い方・技能・費用の差で、使いこなせていない人は残っています。このため、「辺鄙な場所は効果が大きい」という見方には、アフリカの研究など一定の根拠がありますが、「便利な場所はもっと活用すべき」という見方は、今回の資料だけでは裏づけられません。後者を言うなら、「活用の差は、場所よりも技能・費用・年齢の差による」という方が、資料に近い言い方です。